ECPR(Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation:ECPR)は、通常の救命処置を行っても心拍再開が困難な症例に対して、脳蘇生の鍵となる脳血流を早期に再開させ、酸素化された血液を循環させて全身の組織灌流を補い、そして適切な循環サポートをしながら原因検索として心臓カテーテル検査や画像検査などを行い原因疾患を治療する、という積極的な心肺蘇生法である。院外心停止患者に対する管理はガイドラインで規定された心肺蘇生が施行されているが、その転帰は依然不良である一方でECPRでは、救命率、神経学的転帰の改善が期待されている。
2014年にECPRにより神経学的転帰を改善することが本邦で報告 (SAVE-J study)され、日本蘇生協議会によるJRC蘇生ガイドライン2020やアメリカ心臓協議会によるAHAガイドラン2023においても、実施可能な施設において当初の従来通りのCPR が奏功しない場合に、一定の基準を満たした症例に対して提案されている。昨今では、難治性院外心停止に対してECPRが標準ACLSに対して生存率や神経学的予後において前向きな結果を示すRCTも報告されている。2022年に報告された院外心停止患者におけるECPRに関する多施設後ろ向き研究であるSAVEJ II研究は、世界最大のECPR registryとして多くの研究成果を上げてきた。しかしながら、SAVEJ II研究は2013-2018年のデータであったことから、 2017年から本邦の臨床現場に導入された左室補助人工心臓の1つであるIMEPELLAなど現在の実臨床の変化には十分に対応できていない。
本研究では、院外心停止に対してECPRが施行された患者を対象としたレジストリを構築し、本邦での診療実態を明らかにし、生存率、神経学的転帰を調査し、ECPRの適応や転帰改善に寄与する因子を検討することを目的とする。
試験名
本邦における院外心停止患者に対するExtracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation (ECPR)に関する多施設後ろ向き観察研究
略称
SAVE-J Ⅲ study
デザイン
多施設後ろ向き観察研究
目的
院外心停止に対してECPRが施行された患者を対象としたレジストリを構築し、本邦での診療実態を明らかにし、生存率、神経学的転帰を調査し、ECPRの適応や転帰改善に寄与する因子を検討する。
研究対象と期間
2019年1月1日~2024年6月30日までに、本研究参加施設で、院外心停止に対してECPRが施行された18歳以上の成人症例
アウトカム
主要アウトカム評価項目:退院時の神経学的転帰良好
グラスゴー・ピッツバーグ脳機能全身機能カテゴリー(The Glasgow-Pittsburgh Cerebral Performance and Overall Performance Categories)における機能良好(CPC1)および中等度障害(CPC2)を転帰良好とし、高度障害(CPC3)、昏睡・植物状態(CPC4)、死亡もしくは脳死(CPC5)を転帰不良とする。
副次アウトカム評価項目:
- 1か月後の神経学的転帰良好、2) 退院時、1か月後の生存率、3) 合併症(出血、虚血、感染)
資金源
聖路加国際病院荒井喜八郎基金
泉工医科工業
研究の実施体制
研究代表者 一二三亨(聖路加国際病院)
研究関係者 井上明彦(兵庫県災害医療センター)、中田淳(日本医科大学附属病院)、瀧口徹(日本医科大学附属病院)、文屋尚史(札幌医科大学附属病院)、大邉 寛幸(東北大学病院)、羽田佑(聖路加国際病院)、常見勇太(聖路加国際病院)
連絡先
一二三 亨
東京都中央区明石町9-1 TEL: 03-3541-5151
savej3-core@googlegroups.com